インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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公認会計士・税理士である國村年氏が「法人向け生命保険のメリットと活用法」について、全3回シリーズで詳しく解説していきます。
1947~1949年生まれの『団塊の世代』が、2024年中に75歳を超えます。
一方、事業承継の状況は、帝国データバンクの『全国「後継者不在率」動向調査』(2023年)によると、過去最低となったものの、後継者「不在率」は53.9%です。
また、日本政策金融公庫総合研究所の『中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)』では、60歳以上の経営者のうち60%超が将来的な廃業を予定しています。
事業承継ができないと、日本経済・社会を支える貴重な雇用や技術が失われる可能性があり、事業承継は日本の将来にとって非常に重要です。
そこで、今回は、事業承継への備えとして法人保険を活用する方法について考えてみたいと思います。
事業承継とは、企業の熱い想いや技術を次の世代へつなぐことですが、事業承継には多額の資金が必要です。
例えば、以下のような資金が必要です。
① | 現経営者やご遺族への退職金の支払い |
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② | 現経営者から後継者への自社株の移転に伴う納税 |
③ | 会社による自社株の買取り |
① | 現経営者やご遺族への退職金の支払い |
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② | 現経営者から後継者への自社株の移転に伴う納税 |
③ | 会社による自社株の買取り |
①は、会社で資金が必要ですが、現経営者の引退や死亡に伴い、退職金を支給することになります。
最終報酬月額や在任期間や功績倍率などをもとに計算しますが、数千万円になることも多々あります。
②は、譲渡なのか贈与(場合によっては相続)なのかによって、資金が必要となる方(税金を負担する方)が変わってきます。
前者は現経営者に譲渡所得が出れば所得税が現経営者に発生し、後者は後継者に贈与税(場合によっては相続税)が発生する可能性があります。
また、贈与であっても、相続時精算課税制度を選択していれば、相続時に、贈与時の時価で相続財産として足されることになります。
なお、非上場株式等については、贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)という制度もあります。
③は、会社で資金が必要となります。株価が高かったり、株式が分散していて後継者が株式を買い取れないケースや、相続発生時に納税資金がないケースなどにおいて、会社が自社株を買い取ることがあります。
事業承継は多額の資金が必要なため、事業承継への備えとして生命保険が活用されますが、メリットとしては、以下のようなものがあります。
① | 事業や自社株買取りの資金を準備できる |
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② | 後継者やご遺族にお金を直接渡すことができる |
③ | 経営者が亡くなった際の納税資金として活用できる |
① | 事業や自社株買取りの資金を準備できる |
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② | 後継者やご遺族にお金を直接渡すことができる |
③ | 経営者が亡くなった際の納税資金として活用できる |
①は、事業承継時には後継者が金融機関との信頼関係をまだ築けていないこともある中、売上が減少したり、退職者が出て退職金を支給するなど、何かと資金が必要になり、場合によっては、会社で自社株を買い取る必要が生じますが、生命保険で会社に資金を準備できます。
②は、後継者やご遺族を生命保険の受取人に指定しておくことにより、保険金を直接渡すことができます。
③は、会社法上、所有(会社の所有者)と経営(経営者)は分離されており、経営者の地位のみ先に移すことも可能ですが、株価が高いと税額も多額になるため、時間をかけて株価を引き下げたうえで株式を移転することが考えられます。株価を引き下げるためには、役員退職金の支給、含み損がある資産の売却等により損失を計上し、純資産額を減らすことが一般的です。
ところが、株価の引下げは一方で、会社の財務体質の悪化につながるため、これを望まない後継者もおられます。
このような場合、生命保険で納税資金が確保できていれば、無理して株価を引き下げなくても、自社株と経営者の地位を後継者に同時に譲ることが可能になります。
事業承継は、計画的に行えることもあれば、突然訪れることもあります。
事業承継は、100社100通りの方法があるといわれ、それぞれの会社にとってふさわしい方法は異なります。
それゆえ、生命保険を活用するケースも色々です。
経営者の死亡や退任の際に会社が生命保険金を受け取れるような生命保険であれば、例えば、以下のような活用事例があります。
A社 | ご遺族へ退職金として支給することで相続税の納税資金に充てた |
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B社 | ご本人へ退職金を支給するための原資とした |
C社 | 経営者の死亡後、一時的に売上が激減したが、固定費の支払いに充ててしのげた |
D社 | 事業承継のネックとなる経営者保証の対象となっていた借入金の返済に充てた |
E社 | ご遺族の相続税の納税資金確保のため自社株を買い取った |
A社 | ご遺族へ退職金として支給することで相続税の納税資金に充てた |
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B社 | ご本人へ退職金を支給するための原資とした |
C社 | 経営者の死亡後、一時的に売上が激減したが、固定費の支払いに充ててしのげた |
D社 | 事業承継のネックとなる経営者保証の対象となっていた借入金の返済に充てた |
E社 | ご遺族の相続税の納税資金確保のため自社株を買い取った |
一方、ご遺族や後継者が生命保険金を受け取れるような生命保険であれば、速やかに指定していた受取人に確実に渡すことができ、例えば、以下のような活用事例があります。
X社 | ご遺族の相続税の納税資金に充てた |
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Y社 | 後継者の相続税の納税資金に充てた(後継者が自社株を手放さなくて済んだ) |
Z社 | 遺産分割に関して親族内でもめていたが、代償資金として充て、自社株を後継者に集約できた |
X社 | ご遺族の相続税の納税資金に充てた |
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Y社 | 後継者の相続税の納税資金に充てた(後継者が自社株を手放さなくて済んだ) |
Z社 | 遺産分割に関して親族内でもめていたが、代償資金として充て、自社株を後継者に集約できた |
このようにさまざまなケースがあるため、生命保険の活用については、事業承継に詳しい生命保険代理店等に相談しましょう。
【著者】
國村 年(くにむら みのる)
公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター
関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。
資料作成日:2024年4月10日
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