インボイス制度導入でどうなる? 税務調査の方針と留意すべきポイント
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公認会計士・税理士である國村年氏が「法人向け生命保険のメリットと活用法」について、全3回シリーズで詳しく解説していきます。
一口に生命保険と言っても、様々なタイプの商品があります。
例えば、①死亡のリスクに備えるもの、②病気やケガ、介護等のリスクに備えるもの、③働けないリスクに備えるもの、④資産形成に役立てるもの、に分けられます。
皆様の会社にとって、ふさわしい生命保険はどのようなものか考えられたことはありますでしょうか。おそらく、どのような生命保険がふさわしいか、よく分からないという経営者の方も多いのではないでしょうか。
よって、今回は、中小企業経営者のライフステージを切り口に、ライフステージごとにふさわしい生命保険について考えてみたいと思います。
中小企業の場合、経営者のライフステージは、下表のように企業のライフサイクルに応じたものになります。
経営者の ライフステージ |
①起業・ (現経営者が後継者となった)事業承継期 |
②成長期 | ③成熟期 | ④勇退準備期 |
---|---|---|---|---|
中小企業の ライフサイクル |
①創業期 | ②成長期 | ③変革期 | ④成熟期 |
経営者の ライフステージ |
①起業・ (現経営者が後継者となった)事業承継期 |
②成長期 | ③成熟期 | ④勇退準備期 |
---|---|---|---|---|
中小企業の ライフサイクル |
①創業期 | ②成長期 | ③変革期 | ④成熟期 |
創業して間もない企業、右肩上がりで成長している企業、業績が安定している企業、業績が停滞している企業、事業承継の時期にさしかかっている企業など、企業の数だけ置かれた状況は異なります。
そして、経営者のライフステージ(中小企業のライフサイクル)ごとに、リスクと必要な備えは変わってきます。
そこで、上記4つのライフステージにおける各リスクと、それに対応した生命保険を検討していきます。
まず、経営者のライフステージごとの「備えの優先事項」を下表にまとめてみました。
経営者の ライフステージ |
備えの優先事項 |
---|---|
①起業・(現経営者が後継者となった)事業承継期 |
|
②成長期 |
|
③成熟期 |
|
④勇退準備期 |
|
経営者の ライフステージ |
備えの優先事項 |
---|---|
①起業・(現経営者が後継者となった)事業承継期 |
|
②成長期 |
|
③成熟期 |
|
④勇退準備期 |
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ここからは「備えの優先事項」をさらに詳しく見るとともに、それぞれのライフステージに適切な保険商品も見てみましょう。
起業期は、資金的に余裕がないことが多く、従業員の人数も少ないため、経営者の責務が大きくなります。
一方、(現経営者が後継者となった)事業承継期は、役員退職慰労金などのコストがかさんだり、退職者が出たりで、業績が安定せず、資金繰りも厳しくなる可能性があります。
このような状況下で、経営者に万が一があったときには、事業の継続に大きな影響が出ます。
売上、仕入単価や販売単価の交渉、金融機関との借入の交渉などが経営者一人に依存していることが多く、事業承継期においては、逆に、経営者がまだ会社全体のことを把握できていない中で、従来からの担当者にそれぞれの業務を任せているケースもあり、経営者がいなくなってしまうと、会社全体のことが分かる社員が存在せず、売上が減少し、資金繰りが急激に悪化する可能性が高いからです。
それゆえ、割安な保険料で、最適な保障の確保ができると安心でしょう。
万が一の際の事業保障等を目的としたものを選択するのが良いでしょう。
解約返戻金がないため保険料が割安で、事業の運転資金は減らさず、保障も確保するようなものを考えましょう。
事業拡大を進め、会社を成長させていくためには、設備投資や人材の確保が必要になってくるので、事業に必要な資金も増えてきます。
同時に、従業員の急なケガや重大な疾病などの長期離脱時に備えて、雇用維持の対策も必要です。
万が一の際の事業保障や従業員への保障等を目的としたものを選択することになるでしょう。
また、保障が確保でき、従業員の採用や定着のための福利厚生制度の円滑な運営に活用できるものを考えましょう。
成長してきた会社の業績がピークを越え、停滞しはじめる時期です。
業績は安定していますが、そのような状況下でリスクが大きいのは、会社の成長とともに年齢を重ねてきた経営者の死亡や長期の就業不能による信用力低下と売上減少です。
万が一の際の急な資金需要に備えて、一定期間、固定費をまかなえる資金の準備があれば安心です。
万が一の際の事業保障、経営者の死亡に備えるためのものを選択しましょう。
当然、経営者の死亡のみならず、将来的な勇退のことも考慮する必要があります。
また、時代の変化、経営環境の変化や従業員の年齢構成の変化などに応じた福利厚生制度の見直しも検討する必要があるでしょう。
福利厚生制度は一度構築すれば良いというものではありません。
経営者の年齢が60歳以上ならば、できるだけ早めに事業承継のことを考えないといけない時期となります。
会社を将来的にも存続させていくために後継者への円満な引き継ぎと人生100年時代における退任後の充実したセカンドライフを送るための準備が必要となるでしょう。
エグジット(出口)が親族内承継なのか親族外承継なのかM&Aなのかでふさわしいものが変わってきますが、勇退時の役員退職慰労金や相続税の納税資金および自社株の買取資金を準備するためのものを選択することになるでしょう。
ここまで、経営者のライフステージごとにふさわしい生命保険について考えてきましたが、企業の様々な局面において、生命保険は有効な手段となりえます。
今後も成長し続ける素晴らしい会社にしていくために、保険会社の方などとじっくりと自社にとってふさわしい生命保険を考えていきましょう。
【著者】
國村 年(くにむら みのる)
公認会計士・税理士・香川大学大学院客員教授・日本政策金融公庫農業経営アドバイザー試験合格者・戦略MG インストラクター
関西学院大学経済学部卒業。1996年から監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、2007年から小谷野公認会計士事務所に勤務したのち、2011年に香川県高松市で國村公認会計士事務所開業。贈与・相続、事業承継、M&A・組織再編、棚卸のコンサルティングを中心に行っている。著書・執筆は、『誰も教えてくれなかった実地棚卸の実務Q&A』(中央経済社)など多数ある。
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